会長挨拶

第42回日本登山医学会学術集会
会長 黒田 敏(富山大学脳神経外科)

皆さん、こんにちわ。
 このたび、第42回日本登山医学会学術集会をお世話させていただくことになった、富山大学脳神経外科の黒田と申します。ふだんは、脳血管疾患、脳腫瘍、脊髄疾患などの手術に明け暮れています。
 簡単に自己紹介させてください。北海道大学での医学生の時代は剣道部と趣味の登山に明け暮れました。山には年間50日ほど入っていました。ほとんど勉強しませんでした。大雪山黒岳の小屋で1週間以上とぐろを巻いていて、小屋の番人と毎晩ジンギスカン+酒盛りをやって随分と仲よくなりました。そんなある日、忠別岳の避難小屋で疲労のため動けなくなった女性の登山者がいるとの一報が入りました。番人が「お前は医学生なんだから救護に参加しろ!」と言われて、黒岳から白雲岳、高根が原、忠別岳を全速力で一気に駆け抜けて避難小屋に向かいました。昔は力が余っていました。まもなく下から消防団の皆さんも登ってきて、脱水や疲労で動けなくなった方を交代でオンブしながら高原温泉まで下ろしました。これが小生の山岳診療の原風景です。卒業後はあまりにも忙しくて登山のことはしばらく忘れていました。少し余裕ができた40歳から登山を再開しました。しかし、北海道の夏〜秋シーズンはトイレ問題や登山道の荒廃が痛々しく、もっぱらニセコや無意根山で山スキーばかりやっていました。50歳になって、縁あって富山大学に赴任しました。富山大学が運営する双六診療所にさっそく参加しました。30年ぶりに訪れた北アルプスは学生時代と何も変わっておらず、人知を超えた自然の雄大さに心打たれました。ついでにひどい高山病にやられました。頭は痛い痛い、酒は一滴も呑めず、歩くとフラフラ、顔はパンパンで、パルスオキシメータはなんと67%でした!運動不足と寝不足が祟った結果だと思います。翌年からは徐々に順応できましたが、急性高山病の恐ろしさ、身を以って体験しました。双六岳に登る小池新道は、長年、三俣蓮華の診療所を運営していらっしゃる臼杵尚志先生と共通のアプローチルートです。何度か、小池新道や双六診療所で臼杵先生とお会いして話す機会があり、自分自身の高山病体験もあって本学会に興味が湧いて入会させていただきました。本学会で知己となった大城和恵先生とは、富士山診療所における共同研究などでお世話になっています。会員の皆様のご発表も大変興味深く拝聴しております。
そんなご縁もあってか、今回の学術集会をここ富山でお世話させていただくことになりました。本来であれば、立山室堂を会場にして開催したかったのですが、さまざまな制約のため泣く泣く下界での開催としました。山上では、診断も治療も大きな制約の中で遂行する必要がありますが、日頃、一つ一つの医療行為は、できるだけ人知に基づいたものに近づけたいと念じています。そんな思いもあって、今回のメインテーマは「登山医学の科学と実践」とさせていただきました。また、前回の学術集会に引き続き、COVID-19感染が登山そのものや山岳診療に与えた影響、そしてその対策についても積極的なご発表を期待します。ご応募いただいた演題の中からシンポジウムも企画したいと考えております。
なお、本学術集会では、NHK「北アルプス ドローン大縦走シリーズ」でも有名な山岳写真家の西田省三氏を文化講演にお招きしております。卓越した登山経験と山岳写真に基づいたご講演を賜われるものと期待しています。また、立山などのフィールドで地球環境について幅広い研究を展開していらっしゃる、富山大学理学部の青木一真教授に学術講演をお願いしています。また、上述の臼杵先生、大城先生には特別講演をお願いしております。これらの講演を通して普段登っていらっしゃる山を新たな視点でご覧いただけるものと確信しています。
2022年6月、COVID-19 outbreakの影響で世界がどんな様相を呈しているのか、予測することはできませんが、ハイブリッド開催など、万全の体制で会員の皆様をお迎えできるよう、準備を進めております。富山でお会いしましょう!See you in Toyama!