学術講演Ⅱ

学術講演Ⅱ

松田 直 氏

(ヨナハ丘の上病院 新生児室・発達支援外来)

低酸素環境にある胎児脳の発達・適応・損傷,
そして人工子宮システムの開発

 子宮内で育つ胎児の動脈血酸素分圧は25-30 torr と成人の約1/3 程度であり,大気中の成人循環と比較して胎児は明らかに低酸素環境にある.しかしながら,胎児赤血球が持つヘモグロビンF はこの低酸素環境において胎児諸臓器の酸素需要に十分応えることができている.さらに,妊娠高血圧症候群などによって低酸素環境が増悪したとしても,臓器血流量を再分配することによって環境に適応することもできる.すなわち,胎児脳は低酸素には比較的強い耐性を有していると言える.
 その一方で,胎児脳は循環不全による虚血には比較的弱いと言わざるをえない.とくに妊娠30週前後では (ヒトの妊娠満期は40週),「乏血管領域の存在」「血流量の圧受動性」「グリア前駆細胞の脆弱性」のため,胎児に急激な循環変動が生じると脳性麻痺の責任病変となる脳白質損傷が誘導されてしまう.われわれはこれまでヒツジ胎仔を用いた慢性実験系を用いて,この脳白質損傷の病態解析を行うとともにその予防方法の開発を試みてきた.そのひとつが人工子宮システムである.このシステムは脱血回路・膜型肺・供血回路からなるシンプルな人工胎盤と人工羊水から構成され,炎症や循環不全から胎児臓器を護り,その脳発育を十分に支援できる可能性を持っている.
 本講演では,こうした胎児期に特有の発達と適応を踏まえることによって,これを急性高山病や登山外傷の治療に応用できないものかどうか,会員のみなさんと一緒に考える機会としたい.

略歴

  • 昭和56年4月1日 北海道大学医学部医学科入学
  • 昭和62年3月25日 北海道大学医学部医学科卒業
  • 昭和62年6月1日 神戸市立中央市民病院・臨床研修医
  • 平成元年3月1日 北海道大学医学部附属病院 分娩部・医員
  • 平成元年4月1日 北海道社会保険中央病院 小児科・
            常勤医師職員
  • 平成2年1月1日 市立札幌病院 新生児センター・常勤医師職員
  • 平成3年4月1日 帯広厚生病院 小児科・常勤医師職員
  • 平成4年4月1日 市立札幌病院 新生児センター・常勤医師職員
  • 平成6年4月1日 北海道大学病院 周産母子センター・医員
  • 平成15年7月1日 東北大学病院 周産母子センター・助手
  • 平成16年11月1日 東北大学病院 周産母子センター・講師
  • 平成18年5月1日 東北大学病院 周産母子センター・副部長
  • 平成19年5月1日 東北大学病院 周産母子センター・准教授
  • 平成29年4月1日 八戸市立市民病院 新生児集中治療室・室長
  • 平成31年4月1日 ヨナハ産婦人科小児科病院・部長
  • 令和2年4年1日 三重大学大学院 医学系研究科
            産期新生児発達医学講座 (寄付講座)・教授
  • 令和4年4月1日 ヨナハ丘の上病院 新生児室・発達支援外来・
            常勤医師職員

【学会活動】

  • 日本学術振興会 科学研究費委員会  
    平成 25-26 年度、令和元年度 専門委員
  • 日本小児科学会           
    平成24-25 年度 代議員
  • 日本産科婦人科学会         
    平成 8-29 年度
  • 日本周産期・新生児医学会      
    平成 16-29 年度 評議員
  • 日本新生児成育医学会        
    平成 23 年度より評議員